ボートレーサー養成所時代から将来を嘱望され、卒業記念レースでは優勝戦1号艇。にもかかわらず敢然と6コースを選択した豪胆さに、勝てはしなかったものの、喝采が集まった。この男は大物になると、多くの人が唸ったものだ。
近年の新人は、デビュー期の勝率1点台というのがざらにいるものだが、宮之原は3.39。いきなり素質の片鱗を見せつける。デビュー4期目には一気に勝率6.00までアップして初A級昇級。そして5期目に6.52で初A1級昇級。2019年は、A1級として迎えている。もちろん、同期の中ではA1級一番乗りだった。
A1級ということでG1にも出場し、さすがにトップクラスは甘くなく、勝率を落とすことになってしまったわけだが、初G1となった蒲郡・オールジャパン竹島特別では、なんといきなり予選突破。準優勝戦は宮之原以外は全員SGウィナーというメンバーで、さすがに6着と大敗したが、大きな経験となっている。
それが活きたのだろう、19年6月のG2江戸川モーターボート大賞では優出。記念タイトルにあと一歩で手が届くところまで辿り着いた。同世代との戦いである9月のプレミアムG1ヤングダービーでも優出。着々とタイトルホルダーに近づいていると言っていいだろう。19年後期はA2級に降級してしまったものの、経験は間違いなく糧になっている。20年前期は見事にA1級に復帰しているのだから、さらに逞しくなって20年を迎えたということになる。
そうした歩みの中で、19年は登録3年未満の選手の中で勝率、獲得賞金額でトップに立った。これが評価され、最優秀新人を受賞！　錚々たる面々が名を連ねる新人王に、宮之原もその名を刻むこととなった。“勲章”を胸に、大海に打って出ていくことになる20年。G1、あるいはSGでもその名を目にすることが増えていくはずだ。

新規に登録された年の翌年から3年以内の新人選手で賞金獲得額、勝率が1位となり、令和元年の『最優秀新人』に輝いたのは宮之原輝紀選手。対象期間の勝率は6.13。獲得賞金は2797万円あまりとなっている。2019年は優勝こそないものの、全30節で優出8回と健闘をみせた。
そんな宮之原は、ボートレーサー養成所118期生。リーグ戦の勝率は8.12を記録している。これは突き抜けた成績といっていい。教官は『宮之原は超エリートのよう…』と語った。
当然、修了記念競走優勝戦にも進出するが、わざわざ不利なコースを選択して5着に敗れた宮之原。何かに挑戦したかったのだろう。
そういえば、ミスターボートレース今村豊も『いつも前を走ってばかりでは勉強にならないので、わざと後方に回って抜きあげたり、混戦から抜け出す練習した』と養成時代のことを振り返っている。高い目標と意識こそが成長剤であろう。
『大型新人登場！』と周囲の注目を集め、2016年5月、宮之原は平和島でデビューするが、その半年間で2連対率12%をマーク。同期トップの成績を獲得している。期待と予想を裏切らなかったのだが、勝率は、修了記念競走で優勝した板橋侑我が3.40で1位。宮之原は3.39の微差で板橋の後塵を拝した。まさに、これぞ切磋琢磨。互いに意識し合っているのは容易に想像がつく。
こうしたプロセスを経て、令和元年の『最優秀新人』に輝いた宮之原だが、クリアすべき課題もある。持ち味である旋回スピードを活かすためにも『安定した早いスタート』の会得は必須だ。最近増えつつあるゼロ台を連発するだけでなく、バラツキを減らすことが記念戦線常連になるための壁だろう。
むろん、『自ら考え、試してみるタイプ』の宮之原輝紀こと、自力で乗り越えてくるはずだ。