なんと、これが4年連続のトップルーキー選出である。すなわち、デビュー当初からそのポテンシャルを高く評価され、その期待に応えるように早くから頭角をあらわしてきたということだ。デビュー2期目にいきなり5.40という高い勝率を残し、デビューからわずか1年でA2級に昇級。デビュー9カ月で初優出、デビュー1年8カ月で初優勝と、そのステップアップの早さは驚異的ですらあった。
それからやや足踏み状態を経験するが、18年後期に初A1昇級を果たしてからはしっかりA1キープ。18年終盤にはG1優出を2度経験し、19年オーシャンカップでついにSG初出場と、いよいよ大器が覚醒してきた。かつては差しが多かったものが、近況はまくりも増えて、攻撃に多彩さが増してきた。それが大舞台を戦う際にも武器になってくることだろう。双子の兄・充とともに、20年は一気にトップグループ入りを目指す。

三重に注目の双子レーサーがいる。松尾兄弟だ。兄・充は112期生、弟・拓は114期生。ふたりは幼少の頃からボートレースを見て育ち、夢を実現した。今回はトップルーキー・拓についてである。
これまで優勝7回（兄・充は未優勝）の拓は、ボートレーサー養成所時代から頭角を表していた。「チャンプになるつもりで入った」決意がカタチになり、訓練時代の勝率は8.24。卒業記念競走も優勝し、まさに名実ともに114期のエースとしてプロデビュー。1年でA２勝率をマークするなどすこぶる順調にみえた。しかし、本人は「プロは厳しい…」と語っている。それはフライングや転覆など、攻めることで生じる壁を指しているが、その障壁が松尾拓を育てている。「メンタルの強さ」と「レース前の準備行動」を身につけることになったのだ。
『ミスタードラゴンズ』を称された元プロ野球選手・立浪和義さんが「プロセスとは準備のこと」と語っているように、松尾拓も「妥協せず、できることをやってレースに臨みたい」という信念をもつ。つまり、勢いだけで目立っているのではないのだ。そこには思考と行動の反復が内在しているのである。
「まくり差しが得意」な松尾拓の狙い定めた勝利こそ信頼に値する。