レースのために、自分のために。彼女たちは、どんな「オフ」を過ごすのか。ツヨカワなワタシのオフ 刑部亜里紗選手

オフもボートレース中心の生活になっている

ボートレースの世界は、約1週間の宿舎生活が続いたあと、次のレースまでのオフ期間は数日だったり数週間だったりと定まっていません。こうした生活のリズムには慣れてきましたか?

はい、慣れましたし、私には向いていると思います。今はとにかくボートレースが楽しくて、私生活も仕事中心になっているんです。どこかへ出かけようと思ったとき、友達は仕事で、なかなか会えなかったりはしますけど、長期休みのときや休みの日の夜は会えるので、特に苦にはなりません。

ボートレース中心の私生活というのは、具体的にはどういう感じでしょうか?

インタビュー質問に考え込む刑部選手。

レース場に練習に行ったり、師匠(原豊土選手)からプロペラに関する情報や調整の仕方を教えてもらったり。あとはジムに行って、パーソナルトレーナーさんについてもらって足腰を鍛えたり、体のケアとしては接骨院にも通っています。

ジムでのトレーニング

ボートレースとは関係ない部分での趣味などはありますか?

練習の前後……、朝や夜に釣りに行ったりはしています。釣りは小さいときから家族でよく行っていて好きだったんです。長くやらない時期もあったんですけど、大学生の頃に久々に行ってみたら、キビレ(チヌ)がたくさん釣れて、そこからまたハマりました。でも餌釣りからルアーに替えたらまったく釣れなくなって、飽きかけているんですけどね(笑)。でも、朝にサーフ(浜)で釣りをしていると朝日が昇るところを見られるし、船で浜名湖に出るのは楽しいし……。魚が釣れなくても、そういう部分で楽しんでいます。

釣りをしている刑部選手

静岡支部にはたしか釣りが好きなレーサーは多いですよね?

はい。だから私が釣りをやっていたということを話すと、いろいろ教えてくれる先輩レーサーもいます。石原翼さんや石原光さんとは一緒に行ったこともあります。……釣り以外でいうと、師匠は「今度、チャリ(自転車)で浜名湖一周しよう」って言ってくれています。自転車はこれまでちゃんとやったことはなかったんですけど、興味はあります。わたしはとりあえず、なんでもいろいろやってみたいほうなんです。

寝ることで心はリセットされる

食事面など、オフに注意していることはありますか?

以前はレースの3日前から減量するって決めていたんですけど、最近は代謝が良くなったのか、あまり体重が増えなくなりました。だから、食べたいときに食べたいものを食べられるようになっています。甘いものが大好きなので、スイーツを食べてるときは特に幸せですね(笑)。あと、レース後は焼き肉を食べたくなります。

焼肉を食べる刑部選手

普段、睡眠に気をつかったりはしますか?

気をつかっているわけではなく、寝るのが好きなので、休みの日だと9時間以上とか寝ていることも多いです。寝つきもいいほうで、よく「寝るのが早いね」って言われます(笑)。わたしはストレスをためやすいほうというか、他のレーサーに迷惑をかけるようなレースをしたりすると、引きずってしまうんです。でも、寝て起きたら、切り替えられている。寝ることでストレスをためこまずにリセットできているのかもしれません。

睡眠時間は十分とっているとしても、もう少しリフレッシュが必要だとは感じることはありませんか?

今はトレーニングや練習もリフレッシュのひとつになっている気がしますね。一日中、家にいたら、逆に疲れちゃうと思うので、やることがなければウォーキングに行ったりしています。

では、練習などを除いて、オフのいちばんの楽しみはなんでしょうか?

いちばんは家族に会えることですね。レースが終わって、家に帰って、家族の顔を見て、ふうっと張りつめたものが抜けていく瞬間が好きなんです。家には犬もいて、かわいくてしょうがない。散歩に連れて行ったり、近場の大きな公園に行って一緒に走り回ったりとかもしています。

愛犬と触れ合う刑部選手

前検日にレース場に着くと、レーサーとしてのスイッチが入ります

オフのあと、次のレースに入るにあたって、どこかのタイミングで意識的にスイッチを入れるような感覚はありますか?

それはないですね。前検日(レース開催の前日)にレース場に着いて、スマホの電源を切ったときに、自然とスイッチが入る感じです。出場するレーサーと顔を合わせることでもそうなります。

本当にボートレースが好きなようですね。大学時代、教職課程をとっていたなかでボートレースを見て感動したと聞きましたが、どういうところに魅力を感じたんですか?

当時、1マークの近くでレースを見ていたんですけど、スピードとか音とかしぶきとかの迫力に圧倒されて。一瞬で、やりたい!って思ったんです。男子と女子が一緒に戦える世界ということも魅力でした。私は柔道をやっていましたが、練習は男子とできても、試合はできないですから。大会では、男子の1位には優勝旗が渡されるのに女子はなかったこともあったんです。そういうこともあって、「男子と戦わせてください」って言いに行ったこともあるくらいなんです(笑)

負けん気の強さを表すような力強いガッツボーズ。

将来的にはボートレースオールスターなどのビッグレースで男子レーサーと戦えるといいですね。

いつかはそうなりたいし、そのためにもレベルアップしていかなければいけないと思っています。まず来年のイースタンヤングに出るのが目標です。今年、レディースオールスターに出られましたが、すごく楽しかった! 同じ支部の長嶋万記さんからはいろいろなことを教わりましたし、わたしも後輩に対してそういう指導などができるようになっていきたいですね。それも目標です。

レディースオールスター出場時

……「練習やトレーニングがリフレッシュ」という言葉にも驚かされたが、「ボートレースのことを考えている毎日が楽しくてしかたない」とも話してくれた。そんな刑部選手にはオンとオフの境目はないのかもしれない。

インタビューの様子をダイジェスト動画でご紹介。ぜひ、ご覧ください!

刑部 亜里紗(おさかべ・ありさ 1997年5月9日生)

登録番号5205 身長156cm 129期 静岡県出身 静岡支部所属
柔道は三段。大学時代、ボートレースに惹かれ、「一度だけのチャレンジ」という決意で受験に臨んで合格。2021年11月にデビューした。翌22年5月に初1着。今年2月にはレディースオールスターにも出場。最近は予選を突破することが増えるなど、成績が伸びている。